僕らの証明はどこにある

不器用で下手くそ それでも人生さ

2020年の夏に聴いたジャニーズJrの『STAY』

先日放送のザ・少年倶楽部でジャニーズJr.内のグループ・美 少年の6人が、SMAPの楽曲である『STAY』を歌っているのを見た。

わたしが最後にテレビでその曲を見たのは、2015〜2016年のCDTVスペシャル年越しプレミアムライブにおける、SMAPのパフォーマンスのセトリ中。2016年始の1月13日に解散報道の第一報が各種スポーツ新聞に掲載される直前、つまりすべてをひた隠しにしながら何も知らない我々観客の前に人前に立っていた、最後のSMAPのパフォーマンスだ。

あれから早いものでもうすぐ5年が経とうとしている。全ての物事があっという間に激変した2020年、時間軸を少し戻してこの夏、美 少年がSMAPの“あの”(敢えてこう言います)『STAY』を歌った意味を、ずっと考えている。

 

 

 

STAY』。

シングルカットされていないアルバム楽曲なので一般層への認知度はさして高くないこの曲を、SMAPファンはまるで宝石のように非常に非常に大切にし続けている。例えば、ファン投票で収録曲が決まった25周年アルバムの投票数1位を獲得したのが、このシングルカットされていない『STAY』だったことで、ある程度証明できるのではないだろうか。真正面から歌詞を読んだだけだと真っ直ぐなプロポーズとも取れるこの曲ーーー恐らく当初はアイドルPOPSによく見られるラブソングのニュアンスで描かれたのだろうと推測してるけれど、時が経つにつれ(特に解散騒動が表面化した結果)、その言葉の意味に言うなればある種シュプレヒコールのような、別の側面を持ち始めてしまった。

 

 

「どうか道の途中で 手を離そうとしないでよ」


「僕らずっと共に歩こう」


「鼓動止む その時まで」


「たったの50年 一緒に」

 

 

解散報道が激化、そして最終的に空中分解とも取れるようなあの結末の一部始終を身を引き裂かれるような思いで眺め続けていたファンは、この楽曲の歌詞にSMAPと己たちを重ね(特にあの中居が好きだと公言していたのも大きいが)、『STAY』という曲はSMAPそのものを体現するような強烈なメッセージソングへと変化していった。

要するに、SMAPファンの中では「SMAPそのもの」と捉えられていると言っても過言ではない『STAY』という楽曲を、2020年の夏に美少年の6人が歌ったという事実が、わたしには果てしなく衝撃的だった。

 

彼らSMAPはデビューしてからジャニーズJr.の面々と直接的に関わり合っていたことが露出している期間は、実は非常に短い。それに加え今現在ジャニーズJr.に在籍しているような男の子たちは、その大多数がSMAPデビュー後に生まれたのような歳の子ばかりだ。

だからなのか、意図があるのかないのかそれは事務所と彼らのみが知り得ることだが、このような結末を追ってからは特に、大衆の多くが知っていて盛り上がれる定番ソングであるSHAKEなどがチョイスされることはあれど、彼らジャニーズJr.が表立ってSMAPの曲を取り上げることはあまりない。ここ最近のジャニーズJr.でSMAP楽曲を(何故か)重用するのは関西ジャニーズJr.のなにわ男子くらいであろう(本当に何故だろう)*1。それでもそのなにわ男子ですら、アルバム楽曲からの選出は殆どない。あっても『SUMMER GATE』のような爽やかな王道アイドルPOPSソングくらいだ。先にデビューしたグループの先輩たちはおろか、上述のなにわ男子よりもさらに最年長の年齢が若い*2もちろんSMAPデビュー後生まれのメンバーで構成されている美 少年は直接SMAPと関わりがある世代ではなく、強いて言うならメンバーが尊先に「木村拓哉」の名を挙げる程度だけど、それでも尊先に木村の名を挙げる彼らがSMAPファンにおける『STAY』に対しての非常に名上し難い特大感情を把握してないわけがないと思うので、これは恐らく「敢えて」なのだとわたしは勝手に思っている。

 

 

2020年、未曾有の感染症の流行により世の中は激変した。気軽に出かけ、誰かと会い話すことができなくなった。彼らアイドルの活動の主軸であるコンサートを開催することもできず、我々ファンは彼らアイドルに直接会うことも叶わず、フラストレーションが溜まる日々だった。そんな中、有料無料問わず各種インターネット配信という形でたくさんのステージを我々に届けてくれた彼らには、何度感謝を述べても言葉が足りない。

ただ我々ファンは上記のようなコンサート配信や各種雑誌、テレビ、ラジオ、YouTube等の動画配信サービス、SNSなどの様々な媒体で元気な彼らの存在を確認することができたが、無観客のステージに立ち続けていた彼らはどうだろうか?これはなにわ男子の西畑大吾くんがブログで溢していた「我々は皆様に会えない」という趣旨の言葉から勝手に推測をした内容だが、観客を入れての公演が軒並みできなくなってしまった以上、彼らは春先からずっと我々ファンの姿をコンサートなどで確認することができていなかったはずだ。

アイドルという肩書を背負っている以上たくさんの歓声とキラキラと光るペンライトの前に立つことはきっと彼らのモチベーションの一端であることは間違いないだろうし、どれだけ我々ファンが手紙やSNS等で言葉を尽くしたとしても、直接対面できないという我々以上に事実は彼らに突き刺さっているのではないか、と。

今年は配信コンサートとして形を変えてかろうじて開催されたサマパラは、例年はたくさんのファンでいっぱいに膨れ上がるTDCホールで行われたが勿論無観客、普段は観客を入れて収録されているザ・少年倶楽部も(一時期は収録すら叶わなかったが)当たり前のように無観客のNHKホールからの収録が常となり、その両方で『STAY』を歌った彼ら美 少年の前には、誰一人としてファンの姿はそこにはなかった。

例年では考えられない客席にファンの姿が見えないステージだと分かっている上でこの曲を選び歌ったの心境は、果たしてどういったものだったのだろう。

一介のファンでしかないわたしには、その心中を知る由もない。

 

 

 

晩年のジャニーさんの寵愛を一身に受け、ジャニーズの「王道」ど真ん中を直走るような美 少年。

コロナ禍でたくさんの数が予定されていた全ての公演が軒並み中止になり、息の詰まるような夏を過ごしていたファンは、画面に映る彼らのそのパフォーマンスを縋るような思いで見つめていた。

観客が誰もいないステージに立ち、スポットライトを浴びながら美 少年の6人が静かに、でも情緒豊かに『STAY』を歌っていたこと、そして平均年齢17歳の彼らが歌った

「たったの50年一緒に」

の意味を、11月の暮れになったいまでもまだ迷子のように探している。

 

 

 

「あなたと共に歩こう」

 

「いろんなことを乗り越え」

 

 

 

 

*1:先日のなにわ男子の配信ライブにおけるSMAPメドレーゾーンはSMAPファンとして本当に度肝を抜いた

*2:2020年11月現在20歳。なにわ男子の最年長は現在24歳なのでそれよりもだいぶ歳下になる。